美しい線をひく
これはレタリングの実習で、まだ鉛筆に自由があるのですが…
ただひたすらに線をひく時間が圧倒的に長い。
製図セット・定規・えんぴつ・烏口を使っての、超アナログ作業。
過去の生徒さんで、「核兵器の時代に、火縄銃の使い方を教わってる」と言った人がいたそうな。
籠目模様だとか、卍格子にがんじがらめになって、わたしも「なんでここまで…」と思ってしまった。
しかーし。
原研哉さんのことばを発見したのである。
昔のデザイナーは、1mmの間に10本の線を烏口で引くことが出来た。
今のデザイナーはできないし、必要もない。
しかし、それができる身体能力を持っているということは、それだけの「目」を持っているということだ。
そういう「目」があるから、絶妙なバランスの文字を描くことが出来る。
字間や行間も同じことが言える。
デジタルの表現力は現在のところ、人間や自然界の緻密さ豊穣さに比べてチープだ。
自分という人間の持つ感覚のデリケートさに耳を澄ますこと。
そしてそういう感覚によってハンドリングできる造形ボキャブラリーをたくさん自分の中に蓄えていくこと。
目が覚める思いがした。
…「目」だけに。
わたしがいま一番へこたれそうのは、「まぁいいか」と思ってしまう自分のこと。
デザインの仕事に最も向かないのは、「まぁいいか」と思う人だそうだ。
どこまで自分を絞れるのか。
できなくて当たり前だと自分を鼓舞しながら、戦いはまだまだ続く。
あ、あしたもがんばる。
by ikumishikawa
| 2012-10-17 02:12
| クリエイティヴなこと